ショートストーリー「クローバー」最終章〜一週間早いクリスマス〜
2006.12.19 Tuesday.23:06
12月16日、朝9時。
僕は携帯のアラームで目を覚ました。
当初の予定なら10時22分発の電車に乗るつもりだったがどうにも間に合いそうにないので1時間ずらした。
荷物をまとめ、駅へ向かう。
心なしか今までで一番ワクワクしていた。
彼女は果たしてどんな表情をするのだろうか…そんなことで頭の中は一杯だった。
11時22分、駅を出発した電車は彼女とデートする所の駅に到着した。
そのころになると、朝から何も固形物を食べていなかった僕は吐き気がしていたので、酔い止めのドリンクとおにぎり3つを買って路面電車に乗った。
路面電車を降りて彼女の地元まで行くバスを待っていた。
空はどんよりと曇り、予報では雨が降るかもしれないといっていた。
バスの待つ場所付近では中学生が赤い羽根共同募金の呼びかけをしていた。
僕はそれを見ながら買っていたおにぎりを食べていた。
バスが予定時刻より10分遅れて到着し、出発した。
いつも彼女はデートの帰り道に見ている風景を僕も見ていた。
バスは走り出し甲子園で有名な高校の横を通過し、バスの営業所へ着いた。
そこでバスの往復券を購入した。
片道で買うより700円お得だった。
その後バスは高速道路を走った。
途中のバスの停留所で僕の斜め前に座っていたおじいさんが面白かった。
停留所付近になるとソワソワしだして、しばらく中腰のまんまだった。そしてブザーをならしおじいさんはバスを降りていった。
彼女の地元に着いたのは午後5時前だった。
そのままの足でホテルにチェックインした。
少し休憩を取り、明日渡す手紙を書いて外へ出た。
夕食をとるためだ。
駅前にペナルティーのワッキーが番組で訪れたお店があったのでそこで食べることにした。
そこの料理は彼女の地元での郷土料理らしく、注文してその品が届くとお店の方が食べ方を教えてくれた。味は申し分なく美味しかった。
そのあと、あたりをウロウロしながら食料を調達するために近くのスーパーに立ち寄った。
そこで半額に値引きされたおにぎりとから揚げと、お茶と彼女の大好きな珈琲牛乳を購入してホテルへ戻った。
そのあと彼女と10時頃までメールをして彼女は寝た。
僕はといえば隣の部屋のいびきや普段の生活サイクルでは起きている時間だったため、なかなか寝付けなかった。
翌日というか17日の深夜4時。
僕は諦めて起きることにした。
シャワーを浴び昨日買った食料を頬張った。
彼女は5時30分に起きて6時に僕にモーニングコールをくれると言ってくれた。
しかし僕は逆に5時30分に彼女にモーニングコールをした。
「じゃあまたあとでね」
彼女と通話を終えて、なぜかまだおなかがすいていたのかホテルにあった自販機でどんべえを購入しすすっていた。
そして6時30分にはNHK教育でやっている「テレビ体操」をなぜかしっかり真面目にやった。
そうして午前7時20分頃、僕はホテルを後にした。
そのとき彼女とメールをしていた。
僕が先に駅に着いて彼女を探していた。
遠くから見ると不審者かのようだっただろう。
そして彼女を見つけた。
ブーツにハーパン、上はジャケットにマフラーをしている彼女はどこか少し大人のように感じた。
そして彼女のほうへ向かい彼女と目が合うと…
「よ!!おはよう!!!てか来るの遅いww」
と言った。彼女はやはり驚いて…
「何してんの?ww」
と言った。この驚いた表情が見たくて1ヶ月間練り上げたのだ。しかし、彼女は続ける…
「もしかしたら来るのかな〜って思ってたけど、まさかねーって。」
少しバレてました。
とにもかくにも彼女が喜んでくれてよかった。
そしていつもは彼女一人で乗るバスの横の席に僕が座りバスは走り出した。
バスの中では他愛のない話が続いた。
バスの中で少し早いがクリスマスプレゼントの交換をした。
何度も書いたが母親にバレてはいけないので当たり障りのないものを僕は選んだ。
手袋、犬のぬいぐるみのカレンダー、ミッキーのブランケット、そしてクリスマスカードと手紙…
彼女は僕にネクタイと誕生日のクマのぬいぐるみ、そして手編みのマフラーを渡してくれた。
そしてプレゼント交換を終えて、プレゼントを買うときの話題を話していた頃バスは目的地へ到着した。
いつもとは逆方向、いつもならお別れする場所からデートが開始した。
いつも通り最初にプリクラを撮った。
僕らはプリクラで最低一枚はキスプリを撮るようにしている。
いつも僕からキスをするのだが、今回は彼女からしてくれた。
彼女はそっと僕の唇に自分の唇を合わせた。
彼女がキスしているときの幸せそうというかとろけそうな表情がすごく好きだった。
でも、そうやら今回は逆に彼女が僕がキスしている表情を見ていたのかもしれない。
そのあとボウリングをした。
当初2ゲームの予定だったが、彼女がやる気になり3ゲームした。
彼女は尻上がりに調子を上げていくなか、僕は尻下がりに調子を下げていった。そのため3ゲーム目には最後の9.10のところで彼女がストライクを2回だし逆転負けした。
彼女の満足そうな表情を見ながらボウリング上を後にした。
そのあと、近くのブックオフに立ち寄った。そこで思わぬ掘り出し物を目にした。それはゆずの東京ドームライブのビデオだった。
中古ではあるが状態は新品同様、それが350円だった。
迷わず僕は購入し、店を後にして近くにあるショッピングセンターへ向かった。
そこではウィンドウショッピングを楽しんだ。
バッグや洋服…、僕は彼女に引っ張り回されていた。
将来像が見えたきがした。
そしてその中にあったベンチで1時間ほど休憩した。
そのあと、向かいにあった電器屋さんでボイスチャットをするためのマイク付きのイヤホンを彼女は購入した。
外に出ると、身を縮ませるほどの寒さだった。
そしてパラパラと雨が降っていた。
彼女の傘を差し相合傘をした。
駅に戻り彼女は帰りの切符を購入し、その駅の2階にあるレストランでご飯を食べた。
レストランといっても古びたもので、とてもカップルには似合わないようなところだった。
外は風が吹き荒れ気温は4度まで下がっていた。雪が降ってもおかしくない雰囲気だった。
そなると彼女は基より僕も帰れなくなる。
そんな不安さえあった。だから僕は彼女に言った。
「もしお前が帰られなくなったら一緒にホテル泊まろう」
彼女はその発言の真意を知ってか知らずか「うん」と頷いたのだった。
そのレストランをあとにした僕らは今日のメインイベントでもあるELTのライブ会場へ向かった。
ライブ会場へはやはり路面電車を利用した。
車内には僕らと同じようなカップルが何組かいた。
それ以外にも乗客はたくさんいてすし詰め状態だった。僕は彼女の手をしっかりと握ってあげた。
ほどなくして下車した。
会場内には多くの人たちであふれかえっていた。
やはりカップルが圧倒的に多かったのが印象的だった。
ホールの中のベンチに腰をかけて時間が過ぎるのを待っていた。
当初の予定より開場時間が早まり続々と会場内にお客さんが入っていく。
ほどなくして僕らも会場内に入り開演を今か今かと待っていた。
そして5時30分頃にライブがスタートした。
1曲目はスイミーだった。
そして何曲か歌った後fragileのイントロが流れてきたとき、彼女は僕に耳打ちした。
「この曲はゆずひろに歌ってあげたい曲」
fragile…モッチーが歌い上げる中僕は歌詞をかみ締め、気づけば涙が頬を伝っていた。
アンコールに入り、いよいよラストの曲になった。
僕は涙を堪えられず泣いていた。
理由は明白だ。
この曲が終わるということは彼女とのお別れの時間が近づくということになるからだ。
それに彼女はずっと僕の手を握っていてくれたのだ。
二人のたしかな体温を確かめるかのように…
そしてライブが終わり会場をあとにした。彼女は今にも泣きそうな表情で…
「泣かないよ」
それは彼女の精一杯の強がりに感じた。
そして路面電車に乗って駅へ戻った。
21時30分発の電車に僕は乗らなければならない。
それが最終便だからだ。
20時50分ころに駅に着いた僕らは駅のホームへ入っていった。
とうとう彼女の涙腺の堰が壊れてしまった。
彼女は僕の胸の中で涙を流した。
僕は何も言わずただギュッと彼女を抱き締めていた。
僕はおもむろに自分のウォークマンを取り出しある曲を探した。
それを見つけると彼女にイヤホンを渡した。
〜クローバー〜 CUNE
ねぇ瞳閉じて 思いだすメモリーズ ゆっくり時を運ぶ春の風
そう手を繋いで探した四葉の 夕暮れ帰り道ではしゃいでいた
さよなら 駅のホームで 君はちょっと涙浮かべた
もし神様がいるのなら どうか二人はなさないで
もう泣かないでおくれよ 寂しがりな恋心
小さな君の笑顔は僕にとってチカラになる
もう泣かないでおくれよ ずっと抱き締めているから
小さな君の笑顔は僕にとってシアワセなんです
(僕は彼女の聞いているイヤホンから漏れる音を聞きながら我慢できなくなって大粒の涙を流していた)
さよなら 駅のホームで 君はちょっと涙浮かべた
もし神様がいるのなら どうか二人はなさないで
もう泣かないでおくれよ 寂しがりな恋心
小さな君の笑顔は僕にとってチカラになる
もう泣かないでおくれよ ずっと抱き締めているから
小さな君の笑顔は僕にとってシアワセなんです
ねぇ手を繋いで探した答えはほら 足元にある君の笑顔だよ
曲が終わると僕は電源を切った。
彼女は僕の泣いている姿を見てもらい泣きしているようだった。
彼女は僕の涙を拭ってくれた。
そして彼女は寂しそうに言った。
「ねぇ…次はいつ会えるかな…?」
僕にとっては一番辛い質問だ。本当なら…
「すぐ逢えるよ」
っていうのがドラマとかそんなもんでは常識だろうけど、それを言うと彼女を困られるのではないか…僕はそう思って答えることが出来ないでいた。しかし僕は口を開いた。
「来年だね。3月までは待って。俺は来年から忙しくなるし、お前だって忙しいし、これ以上会うのは親に怪しまれても…」
精一杯の言い訳だった。
そんなもん関係なく今日のように僕が彼女の地元まで足を運べばすむ話なのに…でも彼女は少し涙ぐみながら
「うん。分かった。寒いけど風邪とかひかないように気をつけてね」
と僕を労わってくれた。
彼女のこの辛さを押し殺して出てくる言葉の一つ一つは僕の胸を締め付ける。
現実を受け止めたくても受け止めたくないのが本心のはずなのに…彼女はこの半年でとっても精神的に強くなった。
時間が差し迫っていた。
もう21時25分だった。
とっくに僕の乗る電車は到着していたが、僕らが座っていたベンチからではその車両を確認できていなかった。
慌てて僕はその車両へ走り出そうとした直前だっただろうか…
「半年間よく頑張ったね。次は3月かも知れないけど、元気でね!!!大好きだよ」
僕は彼女にそういって電車に走り乗った。
それから彼女と数通のメールのやりとりをしたのち僕は眠りに就いた。
目が覚めるともうすぐ乗り換えの駅だった。
そして最終便に乗り換えた。
これに乗らないと家に戻れないのだ。
あと1時間もしないうちに着くころだったか、日付が変わった。
12月18日、半年の記念日だ。
僕は記念日おめでとうメールを打った。
「今、デートの帰路半ばです。
今日は半年記念日ですね。
つまりはもう12月、ひいては2006年も終わりに近づいてきました。
付き合い始めて半年…思い返せばいろいろありました。
でも今となってはいい思い出です。
来年いつ会えるかは、はっきり言えないのがすごく歯がゆいけど許してください。
半年ありがとう。これからもこれからも一生大好きだよ」
それを打った30分後駅に到着し、家に戻った。
時刻は午前1時を回っていた。そのままドロのように眠った。
このように僕と彼女のデートは終わった。
思ってみれば、これほどまでにサプライズをするのはそれだけ彼女のことを愛しているからできることだなと感じる。
朝になり、僕は彼女からのメールを読み返していた。昨日の車内では見つけられなかった文章があった。
「今日は凄い楽しかったし嬉しかったよ☆
ぁと、毎回泣いてごめんね。
どうしても感情を抑えられなくて…。
でもまた会える日すぐ来るょね?
それまで体に気をつけて、就活頑張ってね☆
プレゼントもありがとう。凄い嬉しかった。
今日は今までで一番幸せな日を過ごせました。
明日は6ヶ月記念日だね。
長いと思ってたけど早く時間は過ぎた気がする。
2006年と振り返るとゆずひろと付き合ったことがことが大きな出来事だったかな。
そして、一番大切で一生一緒にいたい人になったょ。
6ヶ月は早いけどまだ6ヶ月。
これから先の方が長いけれど、ずっとゆずひろと一緒にいたい。
2007年はきっともっといい年になれる気がする。
今日はありがとう。大好きだよ。」
僕は、彼女を誰よりも愛している。
それは僕が自信を持っていえることだ。
これから先も一緒に一生を歩んで生きたいと強く願っている。
溢れた涙
ぎゅっと握り締めた手のぬくもり
一緒に過ごした時間
それが僕からのとっておきのクリスマスプレゼント
-END-
僕は携帯のアラームで目を覚ました。
当初の予定なら10時22分発の電車に乗るつもりだったがどうにも間に合いそうにないので1時間ずらした。
荷物をまとめ、駅へ向かう。
心なしか今までで一番ワクワクしていた。
彼女は果たしてどんな表情をするのだろうか…そんなことで頭の中は一杯だった。
11時22分、駅を出発した電車は彼女とデートする所の駅に到着した。
そのころになると、朝から何も固形物を食べていなかった僕は吐き気がしていたので、酔い止めのドリンクとおにぎり3つを買って路面電車に乗った。
路面電車を降りて彼女の地元まで行くバスを待っていた。
空はどんよりと曇り、予報では雨が降るかもしれないといっていた。
バスの待つ場所付近では中学生が赤い羽根共同募金の呼びかけをしていた。
僕はそれを見ながら買っていたおにぎりを食べていた。
バスが予定時刻より10分遅れて到着し、出発した。
いつも彼女はデートの帰り道に見ている風景を僕も見ていた。
バスは走り出し甲子園で有名な高校の横を通過し、バスの営業所へ着いた。
そこでバスの往復券を購入した。
片道で買うより700円お得だった。
その後バスは高速道路を走った。
途中のバスの停留所で僕の斜め前に座っていたおじいさんが面白かった。
停留所付近になるとソワソワしだして、しばらく中腰のまんまだった。そしてブザーをならしおじいさんはバスを降りていった。
彼女の地元に着いたのは午後5時前だった。
そのままの足でホテルにチェックインした。
少し休憩を取り、明日渡す手紙を書いて外へ出た。
夕食をとるためだ。
駅前にペナルティーのワッキーが番組で訪れたお店があったのでそこで食べることにした。
そこの料理は彼女の地元での郷土料理らしく、注文してその品が届くとお店の方が食べ方を教えてくれた。味は申し分なく美味しかった。
そのあと、あたりをウロウロしながら食料を調達するために近くのスーパーに立ち寄った。
そこで半額に値引きされたおにぎりとから揚げと、お茶と彼女の大好きな珈琲牛乳を購入してホテルへ戻った。
そのあと彼女と10時頃までメールをして彼女は寝た。
僕はといえば隣の部屋のいびきや普段の生活サイクルでは起きている時間だったため、なかなか寝付けなかった。
翌日というか17日の深夜4時。
僕は諦めて起きることにした。
シャワーを浴び昨日買った食料を頬張った。
彼女は5時30分に起きて6時に僕にモーニングコールをくれると言ってくれた。
しかし僕は逆に5時30分に彼女にモーニングコールをした。
「じゃあまたあとでね」
彼女と通話を終えて、なぜかまだおなかがすいていたのかホテルにあった自販機でどんべえを購入しすすっていた。
そして6時30分にはNHK教育でやっている「テレビ体操」をなぜかしっかり真面目にやった。
そうして午前7時20分頃、僕はホテルを後にした。
そのとき彼女とメールをしていた。
僕が先に駅に着いて彼女を探していた。
遠くから見ると不審者かのようだっただろう。
そして彼女を見つけた。
ブーツにハーパン、上はジャケットにマフラーをしている彼女はどこか少し大人のように感じた。
そして彼女のほうへ向かい彼女と目が合うと…
「よ!!おはよう!!!てか来るの遅いww」
と言った。彼女はやはり驚いて…
「何してんの?ww」
と言った。この驚いた表情が見たくて1ヶ月間練り上げたのだ。しかし、彼女は続ける…
「もしかしたら来るのかな〜って思ってたけど、まさかねーって。」
少しバレてました。
とにもかくにも彼女が喜んでくれてよかった。
そしていつもは彼女一人で乗るバスの横の席に僕が座りバスは走り出した。
バスの中では他愛のない話が続いた。
バスの中で少し早いがクリスマスプレゼントの交換をした。
何度も書いたが母親にバレてはいけないので当たり障りのないものを僕は選んだ。
手袋、犬のぬいぐるみのカレンダー、ミッキーのブランケット、そしてクリスマスカードと手紙…
彼女は僕にネクタイと誕生日のクマのぬいぐるみ、そして手編みのマフラーを渡してくれた。
そしてプレゼント交換を終えて、プレゼントを買うときの話題を話していた頃バスは目的地へ到着した。
いつもとは逆方向、いつもならお別れする場所からデートが開始した。
いつも通り最初にプリクラを撮った。
僕らはプリクラで最低一枚はキスプリを撮るようにしている。
いつも僕からキスをするのだが、今回は彼女からしてくれた。
彼女はそっと僕の唇に自分の唇を合わせた。
彼女がキスしているときの幸せそうというかとろけそうな表情がすごく好きだった。
でも、そうやら今回は逆に彼女が僕がキスしている表情を見ていたのかもしれない。
そのあとボウリングをした。
当初2ゲームの予定だったが、彼女がやる気になり3ゲームした。
彼女は尻上がりに調子を上げていくなか、僕は尻下がりに調子を下げていった。そのため3ゲーム目には最後の9.10のところで彼女がストライクを2回だし逆転負けした。
彼女の満足そうな表情を見ながらボウリング上を後にした。
そのあと、近くのブックオフに立ち寄った。そこで思わぬ掘り出し物を目にした。それはゆずの東京ドームライブのビデオだった。
中古ではあるが状態は新品同様、それが350円だった。
迷わず僕は購入し、店を後にして近くにあるショッピングセンターへ向かった。
そこではウィンドウショッピングを楽しんだ。
バッグや洋服…、僕は彼女に引っ張り回されていた。
将来像が見えたきがした。
そしてその中にあったベンチで1時間ほど休憩した。
そのあと、向かいにあった電器屋さんでボイスチャットをするためのマイク付きのイヤホンを彼女は購入した。
外に出ると、身を縮ませるほどの寒さだった。
そしてパラパラと雨が降っていた。
彼女の傘を差し相合傘をした。
駅に戻り彼女は帰りの切符を購入し、その駅の2階にあるレストランでご飯を食べた。
レストランといっても古びたもので、とてもカップルには似合わないようなところだった。
外は風が吹き荒れ気温は4度まで下がっていた。雪が降ってもおかしくない雰囲気だった。
そなると彼女は基より僕も帰れなくなる。
そんな不安さえあった。だから僕は彼女に言った。
「もしお前が帰られなくなったら一緒にホテル泊まろう」
彼女はその発言の真意を知ってか知らずか「うん」と頷いたのだった。
そのレストランをあとにした僕らは今日のメインイベントでもあるELTのライブ会場へ向かった。
ライブ会場へはやはり路面電車を利用した。
車内には僕らと同じようなカップルが何組かいた。
それ以外にも乗客はたくさんいてすし詰め状態だった。僕は彼女の手をしっかりと握ってあげた。
ほどなくして下車した。
会場内には多くの人たちであふれかえっていた。
やはりカップルが圧倒的に多かったのが印象的だった。
ホールの中のベンチに腰をかけて時間が過ぎるのを待っていた。
当初の予定より開場時間が早まり続々と会場内にお客さんが入っていく。
ほどなくして僕らも会場内に入り開演を今か今かと待っていた。
そして5時30分頃にライブがスタートした。
1曲目はスイミーだった。
そして何曲か歌った後fragileのイントロが流れてきたとき、彼女は僕に耳打ちした。
「この曲はゆずひろに歌ってあげたい曲」
fragile…モッチーが歌い上げる中僕は歌詞をかみ締め、気づけば涙が頬を伝っていた。
アンコールに入り、いよいよラストの曲になった。
僕は涙を堪えられず泣いていた。
理由は明白だ。
この曲が終わるということは彼女とのお別れの時間が近づくということになるからだ。
それに彼女はずっと僕の手を握っていてくれたのだ。
二人のたしかな体温を確かめるかのように…
そしてライブが終わり会場をあとにした。彼女は今にも泣きそうな表情で…
「泣かないよ」
それは彼女の精一杯の強がりに感じた。
そして路面電車に乗って駅へ戻った。
21時30分発の電車に僕は乗らなければならない。
それが最終便だからだ。
20時50分ころに駅に着いた僕らは駅のホームへ入っていった。
とうとう彼女の涙腺の堰が壊れてしまった。
彼女は僕の胸の中で涙を流した。
僕は何も言わずただギュッと彼女を抱き締めていた。
僕はおもむろに自分のウォークマンを取り出しある曲を探した。
それを見つけると彼女にイヤホンを渡した。
〜クローバー〜 CUNE
ねぇ瞳閉じて 思いだすメモリーズ ゆっくり時を運ぶ春の風
そう手を繋いで探した四葉の 夕暮れ帰り道ではしゃいでいた
さよなら 駅のホームで 君はちょっと涙浮かべた
もし神様がいるのなら どうか二人はなさないで
もう泣かないでおくれよ 寂しがりな恋心
小さな君の笑顔は僕にとってチカラになる
もう泣かないでおくれよ ずっと抱き締めているから
小さな君の笑顔は僕にとってシアワセなんです
(僕は彼女の聞いているイヤホンから漏れる音を聞きながら我慢できなくなって大粒の涙を流していた)
さよなら 駅のホームで 君はちょっと涙浮かべた
もし神様がいるのなら どうか二人はなさないで
もう泣かないでおくれよ 寂しがりな恋心
小さな君の笑顔は僕にとってチカラになる
もう泣かないでおくれよ ずっと抱き締めているから
小さな君の笑顔は僕にとってシアワセなんです
ねぇ手を繋いで探した答えはほら 足元にある君の笑顔だよ
曲が終わると僕は電源を切った。
彼女は僕の泣いている姿を見てもらい泣きしているようだった。
彼女は僕の涙を拭ってくれた。
そして彼女は寂しそうに言った。
「ねぇ…次はいつ会えるかな…?」
僕にとっては一番辛い質問だ。本当なら…
「すぐ逢えるよ」
っていうのがドラマとかそんなもんでは常識だろうけど、それを言うと彼女を困られるのではないか…僕はそう思って答えることが出来ないでいた。しかし僕は口を開いた。
「来年だね。3月までは待って。俺は来年から忙しくなるし、お前だって忙しいし、これ以上会うのは親に怪しまれても…」
精一杯の言い訳だった。
そんなもん関係なく今日のように僕が彼女の地元まで足を運べばすむ話なのに…でも彼女は少し涙ぐみながら
「うん。分かった。寒いけど風邪とかひかないように気をつけてね」
と僕を労わってくれた。
彼女のこの辛さを押し殺して出てくる言葉の一つ一つは僕の胸を締め付ける。
現実を受け止めたくても受け止めたくないのが本心のはずなのに…彼女はこの半年でとっても精神的に強くなった。
時間が差し迫っていた。
もう21時25分だった。
とっくに僕の乗る電車は到着していたが、僕らが座っていたベンチからではその車両を確認できていなかった。
慌てて僕はその車両へ走り出そうとした直前だっただろうか…
「半年間よく頑張ったね。次は3月かも知れないけど、元気でね!!!大好きだよ」
僕は彼女にそういって電車に走り乗った。
それから彼女と数通のメールのやりとりをしたのち僕は眠りに就いた。
目が覚めるともうすぐ乗り換えの駅だった。
そして最終便に乗り換えた。
これに乗らないと家に戻れないのだ。
あと1時間もしないうちに着くころだったか、日付が変わった。
12月18日、半年の記念日だ。
僕は記念日おめでとうメールを打った。
「今、デートの帰路半ばです。
今日は半年記念日ですね。
つまりはもう12月、ひいては2006年も終わりに近づいてきました。
付き合い始めて半年…思い返せばいろいろありました。
でも今となってはいい思い出です。
来年いつ会えるかは、はっきり言えないのがすごく歯がゆいけど許してください。
半年ありがとう。これからもこれからも一生大好きだよ」
それを打った30分後駅に到着し、家に戻った。
時刻は午前1時を回っていた。そのままドロのように眠った。
このように僕と彼女のデートは終わった。
思ってみれば、これほどまでにサプライズをするのはそれだけ彼女のことを愛しているからできることだなと感じる。
朝になり、僕は彼女からのメールを読み返していた。昨日の車内では見つけられなかった文章があった。
「今日は凄い楽しかったし嬉しかったよ☆
ぁと、毎回泣いてごめんね。
どうしても感情を抑えられなくて…。
でもまた会える日すぐ来るょね?
それまで体に気をつけて、就活頑張ってね☆
プレゼントもありがとう。凄い嬉しかった。
今日は今までで一番幸せな日を過ごせました。
明日は6ヶ月記念日だね。
長いと思ってたけど早く時間は過ぎた気がする。
2006年と振り返るとゆずひろと付き合ったことがことが大きな出来事だったかな。
そして、一番大切で一生一緒にいたい人になったょ。
6ヶ月は早いけどまだ6ヶ月。
これから先の方が長いけれど、ずっとゆずひろと一緒にいたい。
2007年はきっともっといい年になれる気がする。
今日はありがとう。大好きだよ。」
僕は、彼女を誰よりも愛している。
それは僕が自信を持っていえることだ。
これから先も一緒に一生を歩んで生きたいと強く願っている。
溢れた涙
ぎゅっと握り締めた手のぬくもり
一緒に過ごした時間
それが僕からのとっておきのクリスマスプレゼント
-END-